僕の最後のキーケース
シンプルは強い。
無駄がない、という”マイナスを減らす”面での観点がその理由の一つ。
そしてもう一つは、不要な部分を削ぎ落としたことによる用途の明確化。“プラスの要素しか残さない”ことによってそのモノが何なのか、ということを強く印象付けることができます。
これは人間にも当てはまることだ、と思うことがよくあって、誰かに物事を頼もうとするときに頭に浮かぶのは「この人と言ったらこれ」という明確な得意分野がある人なんですよね。
デバイスが発達して誰しもがある一定の能力を簡単に調達できるようになった今、求められているのはスマホやPCのような何でもできる「マルチ」の人ではなく、のような「シンプル」な人なのではないかと思います。
ザ・シンプルなhender schemeのキーケース
photo:via circle – Hender Scheme
僕は基本的に選ぶのは無駄がなく長く使えるような、シンプルなモノ。
その中でも身の周りを見渡して一番シンプルだな、と思うのがHender Schemeのキーケースです。
Hender Schemeは2010年に浅草で生まれたレザーシューズブランド。度々monographでも紹介をしている、ヌメ革を使った無垢で飾り気のない実直な製品作りが人気を博しているブランドです。
関連リンク
・夏を待ち遠しくするために。hender scheme × カリモクのコラボサンダルを買いました。
・これは靴じゃない、アートだ。全てヌメ革のみで作られたHender Schemeのスニーカー「NIKE Air Force 1」
正式な製品名は「circle」。
今までmonographで詳しく紹介したことはないのですが、今は無きHender Schemeの青山店にDRESS CODE.に連れて行ってもらってから、僕はこのHender Schemeのキーケースを4年間毎日ずっと使っています。
先程上で公式の商品画像を紹介しましたが、購入当初は一番左のヌードベージュの色味だったのがここまで色付きました。右のブラウンではないですからね。
ほぼ白に近いヌメがここまでエイジングするとは、手にした時は想像だにしていませんでした。パリッと張りがあった表面も今ではクタクタに柔らかく馴染んでいます。
その割に金具の固定部分は今だにしっかりと固さを保っていてくれて、くるりと鍵を巻いて閉じてくれています。
適度な厚みがあって良い革を使っている証拠ですね。
円形の一枚革、だけ
このHender Schemeのキーケースはこれ以上無いくらいにシンプルな構造をしています。
説明をする必要もなく、見て分かる通り円形の一枚革にワイヤーと固定の金具を付けているだけ。
紐に鍵を通し、それをくるりと革で巻いて持ち運ぶ。
100年前でも1000年前の人間でも作れて、小さな子どもでも理解できるような仕組みです。
この分かりやすさとシンプルさが大好きで、4年経っている今でも触る度にワクワクするモノ。
唯一キーケース、という用途以外に活用しているのはこの真鍮製のシューホーン。
革靴を履く際にポケットからさっと取り出して、スポッと踵をはめるスマートさは気持ちが良いです。昔営業で毎日革靴を履いていた頃は、座敷の飲み会で重宝しました。
この4年間、たまに思い出したように「ラナパー」を塗るくらいで手入れという手入れはほとんど行ってきませんでした。
その代り毎日必ず手に触れるので、”手触り”は365日、それを4年分欠かしたことはありません。
手の油分や水分を吸い、世界にひとつだけの風合いを真っ白なヌメのキャンバスに描いてくれています。
最後のキーケース
鍵を革で包むだけ、というシンプルを突き詰めたキーケース。
モノとしての用途が明確化され、無駄を削ぎ落として必要な部分だけを残した道具。鍵をまとめるという一点だけを磨き抜いた、切れ味の鋭いナイフ。
僕は「キーケース」というジャンルのモノではこれ以上の進化は訪れることはないのではないかと思っています。
きっとそれよりも早く「鍵」というモノがデジタル化され、形をなくしてしまうでしょう。
だとすれば、これがキーケースの完成形にして終着点。
「鍵」の重さがこの世から消えるときが、僕とこのキーケースの別れのときですね。
関連:財布にも終わりが
同じような考えで、電子決済の波を受け、僕は財布にもそろそろ最後の”形”が訪れてきているのではないかと思います。
今使っている財布は上の記事で紹介していますが、並行して自分なりに考えた”終着点”とも言える財布を今企画開発中。
企画の様子は下記ページでお伝えしていきますので、ぜひ御覧ください。
皆さんの手に取ってもらえる日が今から楽しみです。