僕の”最後の財布”を作ります。
2018/09/24
僕の祖父は僕が物心つく前に亡くなってしまったので、はっきりとした思い出と言えるものは僕の中には残っていません。
ただ、祖父が残したモノから祖父がどんな人だったのかを感じることがよくあります。祖父はなんでも自分で作らなければ気がすまなかったようで、家も会社も自分で建て、応接間には祖父の木彫りの像が置いてあるほど。
そして、祖父の生き様を示す最たる例として今も実家の近くに残っているのが“堀口家一族のお墓”です。
3mはゆうに超える、黒い塊。それが腰くらいの高さの足場の上に建てられているので、遠くから見ても明らかに「あれがウチのお墓だと」ひと目で分かります。上部には灯籠のような傘が付いていて、お墓というよりも碑に近い形状。
祖父は事故死と聞いているので死期を悟ったというわけでもないと思うのですが、死後入る場所まで自分でデザインしたというのは恐れ入ります。終の棲家まで自分好みに、思い通りに。
僕も多少は、周りのモノにこだわって生活をしている人間。
祖父のこだわりを見ると全くかなわないなぁと半ば呆れる反面、僕は立派に祖父の血を継いでいるのだと実感します。
「若さ」と「伝統」が手を取り合って
モノにこだわり始めると、最終的に行き着くところはやはり「作り手」になってしまうのでしょうか。
半年くらい前からメーカーさんと共同で一つの財布を作っています。
電子決済化が進み現金が徐々にこの世の中から消えていく中、今本当に求められている「財布」とはどのようなものなのか。
それを若い革小物好き達と集まって一緒に考え、職人さんと意見を交わしながら少しずつ形にしている最中です。
あえてこの時代に若者が集まって財布を作る、しかも百貨店中心の老舗メーカーとコラボをして、という取り組みが珍しく感じてもらえたのかアパレル業界、革小物業界で活動を取り上げてもらうことも増えてきました。
上の画像は「モノ・マガジン2018年10月2日特集号」へ掲載いただいた写真。
そしてこちらは繊研新聞というアパレル業界で一番大きな影響力を持つ新聞の一面に掲載していただいた画像。
僕ら若者だけでの活動だったら正直ここまで注目をしてもらえることはなかったでしょう。信頼と実績を今までコツコツと積み上げてきたメーカーさんの協力があるからこそ成り立ち、広がっている企画です。
僕の”最後の財布”を作る
もちろんこのプロダクトの企画者としては、今の時代のニーズに沿い長く愛せる、多くの人に手に取ってもらえる財布を作るということを前提に動いていますが、それとは別に僕個人としてもう一つの想いを持ってこの財布を作っています。
僕の”最後の財布”を作る。
これが密かに抱えている、この財布にかける僕の想いです。
昨年のiPhoneへの電子決済導入、2020年オリンピック開催による外国人観光客の急増、といよいよ決済後進国日本でもキャッシュレス化の波が避けられない状況になってきました。
恐らく本当にあと2〜3年後には財布が要らない世界がやってくる。
カードも現金も近い内に全てスマホの中に吸収されます。だってその方が便利だしセキュリティも高いから。今はカード会社の手数料や制度の問題で導入が遅れていますが、人が求めるように技術やルールは変わっていくもの。
今僕たちがガラケーを見て「まだ使ってる人いるんだ」と思うようになるとは、10年前は想像しなかったでしょう。それと同じことが今、起きているだけなのです。
そうなると、次に買う財布が、財布というモノとしては人生最後の一つになる可能性が高い。これは僕にとってもあなたにとっても同じことです。
だったら最後くらい本当に満足して使える、数年後に笑顔で「ありがとう」と言える財布がほしい。
それだけ本気であと数年間、財布が消えるまで添い遂げられる財布を作りたいと思っています。
僕の”最後の財布”を作る、というと身勝手に聞こえるかも知れないけれど、誰かのために作るよりはよっぽど真剣です。
財布の最後を締めくくるためにどんな財布を作っているかは、下のページで特集しているので良ければお読み下さい。
まだ企画段階ですが、来月にはMakuakeによるクラウドファンディングを行う予定なのでそれまでには財布の全容をご紹介できるかと。
また、今回は少し特別な革を使っているので、最初ご用意できるのはおそらく多くて100個前後になってしまう見込みです。それ以上は素材の都合上どれくらい増産できるのか分からないのでほしい方は向こう一ヶ月くらい、企画の動きを注意深く追っていてもらえるとありがたいです。
僕自身のために、そしてそれが本当に良いモノづくりに通じると信じて。