働くことは暮らすこと。青森県十和田市で見つけた”楽しい仕事”の育て方。[PR]
どこかの会社のコピーライトで「仕事が楽しかったら、人生が楽しい。」という言葉がありました。
働かなければ人は暮らせないわけで、その時間が自分にとって心地が良いものであればそれを取り巻く生活全てが楽しい時間になる。「仕事は仕事」と割り切るのも自分の心を守るための選択肢としては必要なことだと思いますが、ただ諦めてしまうのではなく、自身の充足を考えながら常に「楽しい」を見つけ続けることが理想的な働き方なのではないかと僕は思います。
そんなことを感じたのは、今年の5月。青森県十和田市に取材で訪れ滞在をしたときのことでした。
取材の内容は十和田に纏(まつ)わる”コミュニティ”についてだったのですが、街の様々な人に触れるうちにこの街に住む「楽しく働きながら暮らしている人」たちの姿を見て、このような生活が理想的であり本来あるべき姿なのではないかと思うことがありました。
まず初めにお話を聞いたのは十和田市の市街地中心で活動するWeb制作会社「ビーコーズ」の方々。
東京で経験を積んだ代表の村岡さんが地元にUターンをして起業。気の合う仲間と共に十和田に新しい風を吹き込みながら、地域の交流を活性化させている街のオーガーナイザーのような存在です。
「地元の選択肢を増やす」という自身のやるべきこと、やりたいことを見つけ周りの人を巻き込みながら進む彼らの姿は僕にとっても眩(まぶ)しいものでした。
元々はレストランだったという改装中の一軒家の中で「次はここを新しい拠点にしようと思ってるんです、まだ何をするかは全然決まってないけど(笑)」と語る彼らの目に映る、ワクワクとした希望の色。
「街のため」と彼らは言いますが、結局のところ自分たちが一番楽しんでいるからこそ人がついてくるのでしょう。
地域の鍵は"帰りたい"と思える場所を作ること。青森県十和田市のオーガナイザー「ビーコーズ」と語る。[PR]
もう一組、取材をさせていただいたのは今年の6月に十和田湖の湖畔で「yamaju」という名前のコワーキングスペースを開業した小林徹平さん・恵里さん夫妻。
東京から東北へ渡り、石巻市で復興支援に携わっていたという二人が辿り着いた、自然と静寂に包まれる十和田湖という場所。開業に向けてのお話を伺ったのですが、お二人とも話す際の顔が非常に活き活きとしていて聞いているこちらまで元気づけられてしまいました。
彼らも同じく自分達の役割を見つけ、それを楽しみながら形にしようとしている人達。十和田の街にはこういった自身のやりたいことを仕事として実現し、暮らしている人に多く出会うことができました。
揺らめく湖面を見つめて。コワーキングスペース「yamaju」で"コミュニティとは何か"を考える。[PR]
くとうてん / 時々郵便局
十和田の街には、他にも「仕事を楽しみながら暮らす」人がたくさん住んでいます。
こちらは十和田市現代美術館のほど近くにある民藝店「くとうてん」。今年一年限定でテスト的に開かれているお店です。
店主の吉田進さんがデザイナーとしての本業を行う傍ら、青森の伝統工芸を文化として残し発信をしたいと始めたお店です。
吉田さんも東京から十和田市へと移住をしてきたとのことですが、まるでずっと昔からこの土地に住んでいるのではないかと感じるくらい青森の風土や文化についての知識が深い方でした。
「くとうてん」には青森県の文化が詰まった工芸品が展示、販売されています。
こちらは青森県津軽地方に江戸時代から伝わる伝統的な刺し子「こぎん刺し」によって作られたイヤリング。
八戸市にある酒造会社が作った、酒粕を使ったバスボム「八仙美人の湯」。こちらは製品パッケージのデザインに吉田さんが関わっているそうです。
面白いなと思ったのは使われなくなったスケボーのデッキを貼り合わせ、素材として作られた木工製品達。
扇子に、
小さな雛人形。
鏡餅なんかもありました。
この形、どこかで見たことあると思ったら、
アイスクリームのコーンでした。笑
マイ箸のようにマイコーンとして使ってほしいと作った製品とのこと。面白い発想ですね。
こちらの歴史を感じる大きなちゃぶ台も、スケボーの板を間に挟み継いでいます。こういう昔のモノと新しい発想が融合する様は見ていてロマンを感じますよね。
更にこちらのお店では「時々郵便局」という取り組みも吉田さんが行っています。
「ここで出した手紙が、いつかその内届く」というサービスで、手紙を出すと吉田さんが気が向いた時に発送してくれるというもの。
いつかわからない未来の誰かに手紙を送れる、ロマンチックな郵便局ですね。
はがきを一枚選び、僕も未来の誰かに手紙を送ってみることに。
いつ届くかがわからないと、書く相手もその内容も少し変わったものになりますね。
住所が変わっている可能性もあるので届くかどうかも正直わからない。だからこそ「これが届いたらいいな」という気持ちを文にして残しておきました。
ポストはどこにあるのかと見渡してみたら「これですよ」と。
この回転する傘上のワイヤーがポストで、吉田さんが気が向いた時に手紙が外され郵送されるそうです。
下げられたカラフルなハガキは、まるで願いを込めた絵馬のよう。
吉田さんもまた、仕事に楽しみを見つけ形として実現している方。
仕事と自身の好きが綺麗にブレンドされた素敵な空間でした。
14-54 CAFE
青森に来たら毎回訪れているフリースペース「14-54(イチヨンゴーヨン)」。その中にあるカフェ「14-54CAFE」は以前monographでもご紹介をさせていただきました。
青森十和田電源・Wi-Fiカフェ 真っ白なキャンバスに"暮らし"を描く「14-54 CAFE」
適度な広さがあり、皆思い思いに時間を過ごすためのスペース。
夜には地元の人が主催となって様々なイベントが執り行われ、街の交流場として機能しています。
このスペースはオーナーのアレックスさんが「地域に開かれた場所」としてつくられました。そのコンセプトに共感した中野渡夫妻がスペースの中に「14-54CAFE」をオープン。地域の賑わいを創出できるようにと、それぞれ意見を出し合いながら運営されています。
僕らもこの日、コーヒーをいただきながら作業をしていたのですが、仕事に煮詰まったのか難しい顔をしてアレックスさんが奥のオフィスから出てきました。
「ちょっと、やりますか。」とカフェの中の中野渡さんに声をかけて、突然始まった卓球の試合。二人共かなり白熱しているようで、球が床に落ちる「カツーン」という音が聞こえる度に歓声と悲鳴が聞こえてきます。
何試合か終えた後、「今日も良い試合でした」とそれぞれの持ち場に戻っていく二人。
これも「仕事」の中の「楽しい」の形だなと。
ちゃんと息抜きをして、しっかりと仕事に打ち込む。
楽しんでいるようで、自己管理にもなっている二人の素晴らしいルーティーンですね。
楽しみながら働いて、暮らしてみる。
そんな「楽しみながら働く」十和田の人たちの姿を見て、僕たちも同じ様に働いてみようということで数日間この土地で仕事をしてみました。
この広く整然とした空間は、街の中心部にある市民交流プラザ 「トワーレ」。
白い壁と木材だけで作られたシンプルな空間のプレイルーム。
館内にWi-Fiが通っており、フリースペースが用意されているのでパソコンが一台あればここで仕事をすることができます。
僕もこちらのエントランスホールで1時間ほど細かな作業を片付けていきました。
十和田市現代美術館
作業スポットとして意外な穴場だったのがこちらの十和田市現代美術館の休憩スペースの中。
作品:マイケル・リン「無題」
高い天井に一面ガラス張りの窓。
陽の光を浴び、通りを眺めながら椅子に座ってゆっくりと仕事をすることができます。
ちなみにこのスペースの床も作品の一つだったりします。
作品:北澤潤「LOST TERMINAL」※1
作品:北澤潤「インドネシアのジョグジャカルタの街中をスケッチした壁画」※1
作品:藤浩志「ヤセ犬」※1
美術館ということで、そこかしこに可愛げなアート作品が散りばめられています。
ふと一息つこうと視線を外した先にこういう遊びがあると、不意に楽しい気持ちになれていいですね。
※1 企画展「ウソから出た、まこと – 地域を超えていま生まれ出るアート」の関連作品(〜2019/9/1まで)
十和田湖の湖畔を眺めながら
取材で訪れた十和田湖の近くでも少しだけ仕事をして帰りました。
立ち寄ったのは十和田湖の観光交流センター「ぷらっと」。
Wi-Fiが使えたので1階のフリースペースを借りて少し作業を。
2Fのテラス席からは十和田湖を一望することができたので、そこに座りながら仕事をするというのも良さそうですね。今度来た時は実践してみようと思います。
いつでもすぐそこに、自然
十和田湖での取材が終わった後、せっかくなので街中まで十和田の自然に触れながら帰ろうということに。
まるで海のように広い湖を眺め、湖畔を歩いて。
少し車を走らせれば、車道のすぐ側を流れる奥入瀬渓流。
せせらぎに呼ばれ、車を停めて飛沫を感じながら写真を撮ってきました。
十和田湖の雄大で静かな湖面も落ち着きますが、奥入瀬渓流の大胆で力強い流れには活力とパワーをもらえますね。
僕の仕事はほとんどの時間がパソコンの画面とにらめっこ。
リフレッシュをしたい時にすぐ近くに、こんなに素晴らしい自然と触れられる環境が羨ましいです。今多くの人はこの青森県十和田市の土地に集まってきている理由がなんとなく体で分かったような気がします。
“楽しい”を見つけたその先に
今回の取材で出会った、「楽しく働く」姿が眩しい青森県十和田市の方々。
彼らは皆全員が自身の目的を見つけ、息抜きを挟みつつ全力で、希望に満ちた目で夢を語ってらっしゃいました。
自分のやりたいことをやって、暮らしていく。シンプルですがこれが本来の人間の、生き物としての在り方なのではないかと思います。
たとえ苦しい時があっても楽しいから続けられる、息抜きを挟んで前に進んでいく。「働き方改革」の正しいベクトルはきっとこういった”気持ち”や”目的”に紐付いたものであるべき。
そしてこの土地では、ふと視線を上げて前を見れば大きな湖や広い空が包んでくれる。
働くひとの”楽しい”を応援してくれる素敵な器がここ、青森県十和田市という土地です。