揺らめく湖面を見つめて。コワーキングスペース「yamaju」で”コミュニティとは何か”を考える。[PR]

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    2019/07/25

地域独自の”コミュニティ”が自発的に生まれ、近年急速な盛り上がりを見せている土地、青森県十和田市。

前回の記事、「地域の鍵は"帰りたい"と思える場所を作ること。青森県十和田市のオーガナイザー「ビーコーズ」と語る。」では十和田市の中心街で活動する「ビーコーズ」の皆さんを中心に生まれたコミュニティについて取材をさせていただきました。

今回は同じ”コミュニティ”というテーマの基、2019年6月に十和田湖のほとりで新しくコワーキングスペースをオープンされる方がいると聞き足を運ぶことに。

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「yamaju(やまじゅ)」はメンバー登録制のコワーキングスペース。
小林徹平さん・恵里さん夫妻がクラウドファンディングも活用し、多くの人の後押しを受けて創り上げた場所です。

十和田湖の青色と木々の緑に囲まれ、ゆったりした気持ちで休暇を過ごすように働く場所を作りたいという思いでお二人が作られた「yamaju」。基本は会員制のスペースですが週末と祝日だけ、一般の利用客も滞在できるカフェに変身します。

リンク:メンバー登録制コワーキングスペース・中長期滞在者専用ゲストハウス「yamaju」

お話を伺った当時はちょうど開業に向けて改装工事を行っていた途中。

自然あふれるこの十和田湖畔で「yamaju」のお二人が始める、新たな試みについてお話を伺ってきました。

“コミュニティ”とは何か

小林徹平・恵里さんプロフィール
宮城県石巻市の震災復興支援に携わる中で出会い、ご結婚。現在は地域ブランディングや環境デザインを手がける「風景屋ELTAS」を立ち上げ”場所や地域に合った本質的な暮らし”を作り、育てている。青森県からの街並み調査の依頼を受け、その一環で十和田湖を訪れた際に湖を取り巻く自然に感銘を受け、コワーキングスペース「yamaju」の立ち上げを決意。クラウドファンディングで資金の一部を調達し、2019年6月に開業。

堀口(drip):まず初めに、この十和田湖の湖畔でコミュニティを始めようと思ったきっかけについてお伺いしても宜しいでしょうか。

徹平:そうですね…”コミュニティ”って何だと思いますか?

平岡(drip):僕らも東京でブロガーのコミュニティを運営しているのですが、その人達を見て考えると「同じ目的の基に生まれる人の集まり」が、なんとなくコミュニティかなと。実際に僕たちはそうした認識で運営をしています。

徹平:そうなんですね。それが”場所”になると、どういうことになると思いますか?昨日は”街中のコミュニティ”を取材されたとお話されていましたよね。単に”コミュニティ”について、と言われた時に何を指しているのかわからないので認識をはっきりさせておいた方がいいかなと思いました。

堀口:なるほど、仰るとおりです。では言葉を変えて「コワーキングスペース」という場所を建てるに当たり、十和田湖という土地を選んだきっかけや理由はございますか?


写真:「yamaju」の裏手には改装前の「山寿食堂」の文字

徹平:元々は青森県から「街並みのデザイン」について依頼をいただいたんですが、街を実際に見てみたら何か大掛かりなことをするよりも、元々ある資産を活用したリノベーション的な取り組みを可能な範囲で少しずつやっていった方がいいんじゃないかという話になったんですよ。

ただ、僕達はずっと宮城県石巻市を中心とした被災地で活動をしていたのですが、人様の建物に手を加えるというのは善意にも、悪意にも取られてしまうことがあって。

だから、「こういう場所があったらいいな」という実験装置のような取り組みを自分達でやってしまったほうが早いかなと思ったというのが「yamaju」の発端です。2017年の11月くらいから調査として十和田湖に来るようになったのですが、調査に来て土地に触れると自然といつの間にか楽しくなっていきました。足を運ぶうちに地域の人との交流が増え、2018年の6月にまずは事務所としての居場所を借りることになりました。

堀口:最初は調査がきっかけで、土地の良さを肌で感じて、実際にご自身で実験的に作ってしまおうという流れなんですね。

徹平:基本何も考えていないので、そんな感じです(笑)。「借りちゃったよ。意外と大きいよって(笑)」って。

堀口:確かに結構建物自体も大きいですよね。最大何名ぐらい収容できるのですか?

徹平:着席で最大ですと、30人ですかね。

堀口:今はまだ実験の段階だと思うのですが、将来的にこういった人が立ち寄ってくれる場所になったらいいなというイメージはあったりしますか?

徹平:基本的には「この周囲の自然を愛して大切にしてくれる人」がここに集まるといいなと思っています。それで、ちょっとした意思の現れとしてメンバー制のオフィスではあるのだけれども、平日休日問わずににシャワーだけは全ての人に開放しています。これは十和田湖の自然をアクティビティとして楽しんでくれているカヌーに乗った人たちや自転車乗り、ランニングやウォーキングする人たちのような方々を「yamaju」では受け入れていきたいと思っているからです。ただ、それを店構えとして表現するのはなかなか難しいところではありますね。ちなみにこのおかげで壁を壊したり、工事範囲が拡大して工事費が結構上がってしまいました(笑)。

「yamaju」は街の交差点

堀口:お二人の個人的なもので構わないのですが、この「yamaju」の近くでお気に入りのスポットや気に入っているポイントのようなものがあればぜひ教えていただけないでしょうか?

徹平:ここかな…お気に入りの場所(下の写真)。「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」って言って、水に氷をいれると割れますよね。あれと逆の現象で、溶岩が冷えた瞬間に柱状に割れている箇所があるんですよ。その柱の上の部分に座るのが好きで。あとは「自籠岩(じごもりいわ)」って言われる場所もあって、昔、修験者の人たちがそこで修行をしていたみたいなんですよ。僕もその中に籠もって同じようにしてみたいと思っています(笑)。

恵里 :私はスポットというか、これはすごい偶然なんですけど、私達2017年の3月に結婚したんですが、披露宴の席次表によくお互いのプロフィールを載せますよね。最後に将来の夢の欄を作って、私は「湖畔に佇む家に住みたい」って書いてたんですね。当時は全然十和田湖に来ることも予想もしていなかったんですが、なんとなくそういうのが昔からあって。なのでスポットではないんですが、この場所に今いられるということがすごく良くて。

徹平:でもそれは「yamaju」だと湖の横じゃないからダメって言ってるんですよ(笑)

恵里 :そう、もう少しほとり感がほしいよね。なかなか難しいですけど。なんとなく昔から湖という場所に憧れがあって、それが叶いつつある状況なんですよね。十和田湖は二重カルデラって言われていて、外輪山に囲まれているので、峠を越えないと来られないっていう秘境感も心理的に落ち着くっていうのもあるのかもしれません。
私は2014年に東京から石巻市に移住して、仕事としてアートフェスの立ち上げに関わっていました。その時に初めて海沿いの街に住んで。その後ここに住んで分かったのは、海の良さももちろん感じるんですが、私は湖の静かな凪のときに、水面をみていたりする方が落ち着くのかなぁ。

徹平:街の計画設計業務を生業としていたんですが、それらは基本的に業務が終わると地域との関係性も終わってしまうことが多いんですよね。手離れしていく感覚が良い時もあるし、残念なときもある。なので、できる限りその地域の事情を把握した上で、あらゆることをやった方がいいなぁと思っています。今回の場合はコワーキングスペースの候補地は他にもあったんですが、立地的にこの「yamaju」が一番良いと思っていました。

地域の設計上、街の交差点ってとても重要で、「yamaju」の前はちょうど秋田県側、奥入瀬渓流側から観光名所である乙女の像へ入ってきて、ちょうど道のぶつかったところなんですよね。あと郵便局と漁協もすぐ近くにあって、漁師さんや飲食店を営業されている方、地域で唯一の金融機関に来る方と朝夕に自然とお話できるので、それが良かったですね。

堀口:「yamaju」の場合コワーキングスペースなので「働く」というのも”コミュニティ”のテーマの一つだと思うのですが、こういった方が来てくれたらいいなというのはありますか?

恵里:誰でも歓迎ですね。特にこっちで設定するものでもないし、楽しくその場を共有してくれるのであれば誰でも歓迎です。

堀口:”コミュニティ”を構成するのは人間なので、やっぱり楽しくいられるというか、合う合わないというのは大切ですよね。

恵里:そうですね。ただ、なにかその人がやられているお仕事はコワーキングスペースに沿うようなものであっても、それが「yamaju」に沿うかはどうかはわからないですよね。私たちは環境を大切にしているけど、あんまりそういうのは興味ないんだよね、っていう人だと、ちょっと感覚が合わないかもしれない。それはその場を育てていく上では大切な部分だと思っています。共感ができなければ共存はできないと思います。

徹平:最近は「愚痴っぽい人とコミュニケーションを取ること」が自分の中でストレスになっていると気づくようになって。「yamaju」の仲間というか、今ここに集まって夜な夜な飲んでいるような人達の中にそういう人はいないんですよね。人のやろうとしていることを否定はしないし、ネガティブな発言をする人もいない。未来がどういう風にあるべきかプラスのベクトルでいられたらいいなと思うし、ここはそういう感情になれる場所だと思います。

堀口:確かに、滞在する場所や土地によって出てくるアイデアや方向性に大きく影響がありそうですよね…!

恵里:さすがにあまり大人数は収容できませんが、小さなベンチャー企業やフリーランスみたいな方がふらっとやってきて滞在してもらって、仕事していただくっていうのもいいですね。

堀口:さっきから話していて思うんですが、湖をみながら会話できるのは非常に良いなと。都会だとどうしても壁に囲まれていて、視線のやり場がないというか…遠くをぼんやり見ながら会話できるのはすごく新鮮ですね。

平岡:どうしても向かい合うと、対立してしまいがちというか、同じ方向を向いて話ができるのはすごく素敵ですね。横ならびでチェアに座りながら話すの、すごくいいなぁ。

堀口:青森県以外の方が来ることはもちろんですが、地元の方にとって「yamaju」はどんな存在として捉えてほしいですか?

徹平:基本的にはいつでも来て下さいと伝えています。縁側は自由に使ってくれてもいいし。やっぱり観光地だと、どうしても商売っ気がでてしまって、ぼーっとできる場所が少ない気がするんですよね。

地域に溶け込み、
いよいよ開業。

平岡:ここまで苦労されたのはどんな部分でしょうか?

恵里:お金の計算はやっぱりちゃんとしないとって感じで大変でしたね。そもそもやったことのない事業計画書を二人であーでもない、こーでもないって作ったりして、そこは頑張りましたね。

徹平:でもそれ以外はほとんど大変なことはなかったですね。というのも約一年くらい、割とゆっくりと準備期間があって、地域の声を聴きつつ何が良いかを探していったので。お盆や当初の計画ではオープンする予定だったGWにも結局間に合わなかったですしね。

恵里:地元の人たちにも「こんな商機を逃して大丈夫なの?」ってだいぶ心配されましたけど、「まぁ確かにそう思いますけど、しょうがないんです」って(笑)

徹平:もしかすると一年後に「あの時開けておけばよかった!」ってなるかもしれないけどね(笑)

恵里:これまでの間も自分たちの友人もけっこう泊まりにきてくれて、そういう人たちがどういう感想を持って、どういう場があればもっと来たくなるのかが、そこで実験できてたのはよかったですね。設計してくれているのも徹平の同級生の建築家と、以前被災地の仕事でご一緒したもう一人の建築家に入ってもらって、二人とも合計3回ずつ来てくれています。
だから同じ目線で意思疎通できているし、ここに来てくれているから何が必要なのかを理解してくれる。そこに徹平が加わって3人4脚みたいな感じで進めてこられたのはとってもよかったですね。
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徹平:最初は6月くらいに来た時も、ひたすら散歩と森を歩いたりしていました。呼ばれた二人は「俺たちは何しにきたの?」って言ってましたけどね(笑)

ひたすらルーペでコケをみたりしていました。いわゆるまちづくりでは、よそ者が入ってくると、住民の方にあまり良く思われずに批判やご意見が結構シビアにでることがあるんですが、一年間そんなことは一切なく、勉強会やマルシェを開催したり、事業者にヒアリングを進める上で揉めるようなことはなかったですね。いきなり来てすぐに店を作ってしまうと「自分勝手だよね」って思われてしまうかもしれないので、そういう意味では時間を掛けて馴染めるようにしました。

「役割」を分けることが共生の秘訣

平岡:一年以上かけて、街とそこに住む人と仲良くなっていったのですね。そして、これからいよいよ立ち上げなんですね。

恵里:やることに関しても、夜な夜な「こういうのがあったらいいよね、やりたいね」とみんなで話し合ったりして考えたものが発端であることが多いのですが、それも全部「いかにここにいる人たちと競合しないか」を意識しました。

同じことをやってしまうとそもそもつまらないというのもあるし、意味もない。もともとやられている商店の方からすれば「あいつら後から入ってきて、同じことやって…」って思うのはよくわかるから、それは絶対やめようと思って。
じゃあここになくて必要そうな「隙間」をやろうと。これまでになかった視点でいうと「授乳室」や「オムツ変えができる場所を作る」とか、そういうのは意識しました。
友人たちも子持ち世代が多いので、そういう人たちが来た時に不自由にさせたくないし、子供を連れて観光地に来るのは絶対にあることなので。そういう人たちに「どうぞ」って使って欲しいです。


photo:via 湖畔の本棚スペースをイメージして作った栞型のショップカード

徹平:今は授乳室の場所が載っているアプリとかあるんですよね。旅行先では常にそれを開いて行き先を決めたりする人も多いみたいで。

平岡:僕の友人も赤ちゃんがいるんですけど、確かに常にベビーカーを置けるかで入るお店を決めているって言っていました。子供がいるかどうかで視点が全然違いますよね。


写真:改装中の「yamaju」の外観

恵里:そうなんですよね。そういうのって経験者からしか学べないことなので。そういう人たちが安心して来られるようにしたいなぁと思っています。

徹平:だから、車椅子の入れるトイレにしたこともそうだよね。結構ギリギリまでスペースを確保したりして。

平岡:役割が他と違うことで、お互いに紹介しあったりもできそうですね。授乳室はあのお店にあるよ、みたいな感じで。

恵里:そうですね。ゲストハウスも普通にやろうとすると一泊から泊まれるという宿泊プランになると思いますが、他の宿泊施設もありますし競合になってしまうから、うちは四泊からにしようと。四泊以上してくれないと泊まれないんですよ。結構チャレンジングで、親からも「大丈夫?そんな人いるの?」って心配されたんですけど、「それはそれでいいんだよ」と。長く滞在して欲しいって言ってるのに一泊だけだとあまり意味ないですし。

堀口:僕らも前回は一週間近くいましたが、住んでみると意外とあっという間ですしね。

恵里:会社員の人はまだなかなか難しいかもしれないですが、実際、そういった働き方ができる人が増えていますからね。

「yamaju」が目指す”コミュニティ”のカタチ

写真:改装中の「yamaju」の屋内

堀口:それでは最後に、一番最初のお話に戻るんですが、お二人の考える”コミュニティ”について今一度教えていただけないでしょうか?

徹平:”コミュニティ”と言うと、実は未完の論文があるんです。僕が考えるに、基本的には「共有知の量」が大事なんですよね。昔は地域社会だったので、閉じられたコミュニティで同じ知が共有されて、それで成り立っていたんです。でも多分、今はSNSや様々な価値観を通して、堀口さん達が言うように「同じ目的の基に生まれる人の集まり」がある。その場所の気候・風土で形成されるコミュニティと同じ目的意識の基に集まるコミュニティと、それ以外と。いろんな重なりと輪があっていいのかなと思っています。

「yamaju」は、十和田湖とその周囲の自然を愛する人たちが集まるコミュニティであればいい。地域の人達はそこに暮らしているし、自然の機微もよくみているから、天気の話は形式的なものではなく、本当に自然に日常の会話に溶け込んでいる。外から来る人は「綺麗な景色だ!」と言ってくれる。属性が違っても共通項として「十和田湖とその周囲の自然を愛する気持ち」があれば、後は何でもいいんじゃないかな。

“コミュニティ”を”それぞれが好きなものの集まり”と仮定するなら、それらがいろんな所で重なって、それを表現する場所が「yamaju」であればいいなと思っています。今は一階の一部の空間も展示ギャラリーにしようと思っていて。今度仲間の一人が北欧に行くんだけど、「北欧to北奥展」をやろうと話してるんですよね。撮ってきた写真や買いつけてきた雑貨を並べたりして、そういう暮らしや文化を紹介してもらったりとか。(※1)

※1 「北欧to北奥展」は2019年7月28日までの土日のみ開催中

恵里:今度は行った先々で投げ銭をもらって活動をしている落語家さんも来る予定です。ほっこり亭じゅげむさんっていう。(※2)

※2 講演は2019年6月28、29日で開催済み

徹平:いろんな輪が重なるのは観光地らしいことだし、十和田湖休屋地区自体も元々は明治初期に栗山新兵衛さんという方が定住を始めた土地で、そこからまだ150年くらいしか経っていないんですよ。霊山としては千年単位ですが、人の住む場所としては意外と歴史は浅いんです。南部藩の人もいれば、津軽、秋田の人もいるので、文化が混ざっている。十和田湖も秋田県と青森県にまたがっているので、いろいろなものが混ざり合う場所になるといいんじゃないかな。

平岡:それも「yamaju」さんが掲げる「あずましい湖を楽しむうつわ」の話と重なりますね。いろんなものが入ってくるというか。
※「あずましい」とは、東北地方の方言で「居心地がいい、落ち着く」という意味

徹平:うまく、つなげてくれましたね(笑)

恵里:私が最近思っていることで石巻市にいた時の話なのですが、石巻市は震災後のボランティアが28万人くらい入ってくるボランティアのメッカみたいな場所になっていて。それで訪れたその土地を気に入ってそのまま定住しているというIターンの人たちが結構いるんです。そのような「移住」「定住」っていう言葉が良いものとされているように感じます。もちろん、過疎化していく地域に若者が移住してきてくれることは素晴らしいことなんだけど、「移住」「定住」という言葉ができたことによって、土地にしばりつけるようなニュアンスを感じてしまうなと思っていて。

本来、暮らし方とか住む場所は一人ひとりが選べるはずだから、誰がどこに住んだっていいんだけど、移住したらそこに「ずっといなければいけない」という感じに、移住した側も受け入れる側も思ってしまっているというか、「骨を埋める覚悟」みたいな強い意志が求められている。本当はもっと自由に考えてもらっていいのに。

もちろん、突然行ってその地域を荒らして、自由に住んで離れていいって言ってるわけではなくて、その地域に対する向き合い方がしっかりしていればもっと自由に生きてもらっていいのかなと。それが「移住定住促進」みたいな言い方をし続けると、苦しさがどこかで生まれてきた時に無理が生まれてしまうのかなと。実際そうやって出ていってしまった人もいます。なので、そうならない、”ゆるやかなコミュニティ”が作れたらいいなと私は思っていて。

それで、”ゆるやかなコミュニティ”というのは、コアになる共有のものがあれば、出入り自由というかなにも縛るものはないっていうのが私のイメージかな。離れたい時って絶対あるんですよね人間は。ずっとはそこにはいられないと思うし、息苦しい。出たければ出ていいし、戻りたければ戻ってきていいし、そういう場に「yamaju」もなればいいと思っています。いろんなコミュニティをそれぞれが行き来するイメージで。

今私たちは仙台市にも家があるんですけど、そっちをなくそうとは思っていなくて。なぜなら向こうのコミュニティも大事だし、こっちのコミュニティもすごく大事だし。東京に実家があって、帰れば両親とか兄弟、友達もたくさんいて、そっちもそっちで大事だし。戻る場所が沢山あることは私にとって居心地がいいんですよね。なんかそういう感じでここもそのひとつになれたらいいのかなと思っています。

堀口:確かに「移住」や「定住」という言葉は今、重く捉えられすぎているかもしれませんね。結婚に似た感じというか…

恵里:そう!契約的な感じですね。

堀口:もっとお付き合いの期間があっても良いのかもしれませんね。そもそも地元の方は土地に愛があるので、僕らもよく「住んじゃいなよ」ってお声掛けいただくんですけど、やっぱりそれが重荷に感じてしまう人もいると思うので。緩やかにいつ来てもいいし、離れてもいいし、というのはあまりない感じですね。

恵里:最近は「お試し移住」とかが少しずつ始まって来ましたね。でも、名前を付けると「お試し移住に来た人」ってそれでまたレッテルを貼られるし。そんな名前なんか本当はいらないんですよね。気に入れば、そこにいればいいんじゃないくらいのスタンスの方が。でもいたいなら、みんなと楽しく仲良くしてね、くらいで。それを「yamaju」で実験できたらいいかな。

平岡:すごく開いていますよね。誰が来てもいいし、いろんな催しを持つところとか。

恵里:そうですね。人間、自分を誰かにあけっぴろげにすることは怖いと思うんですよ。傷つくことも嫌なこともあるだろうし。でもそれをやっていかないと相手もこっちを理解出来ない。徹平が私がここに来る前に一年かけてここの土地の人たちと対話をし続けたことがまさに自分を開くことだと思うんですよね。そういうのは、すごく大事だと思いつつ、縛られるつもりはなく、自分のアンテナを持っていろんなところへ行けるように、くらいに考えています。

堀口:これまでお二人が石巻市で活動してきたことの学びが今の「yamaju」に繋がっているんですね。

恵里:そうですね。被災地は震災で失ったものも大きくて、急激な過疎化と高齢化を体感している最中なんですけど、それは多分今日本中どこでも一緒の悩みで。だからあの地域の人たちから学ぶことがとても多いし、学ぶべきことだと思います。

十和田湖のほとり、いつでも、いつまでも居られる場所

今回は十和田湖のほとりで新たなコワーキングスペース作りに挑戦する小林徹平さん・恵里さんにお話をお伺いしてきました。

“コミュニティ”の考え方、十和田の土地が持つ魅力、地域の人達の関わり方等、僕自身聞いていて学びになることばかり。

これからも十和田のような街にお邪魔する際は、お二人に教えてもらったことを活かしていこうと思います。

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写真:オープン後の「yamaju」の内観

「yamaju」は2019年6月にオープンし、現在宿泊者を受付中。十和田湖の湖畔を見つめて、のんびりした時間の中で仕事をしたい、という方はぜひお二人を訪ねてみてください。

HPリンク:メンバー登録制コワーキングスペース・中長期滞在者専用ゲストハウス「yamaju」

Facebookページ:yamaju – Facebookページ

Instagram:あずましい湖を楽しむうつわ yamajuさん(@yamaju_laketowada)

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