起業や複業を始める前に読んでほしい一冊の”小説”
「独立したいんですけど、どうしたらいいですか?」
キラキラとした眼差しを向けられながら、こういった相談を受けることが多々あります。
僕自身が元々大企業に勤めていて、そこから複業を基点に起業をしたという経緯があるからなのでしょう。頼ってもらえるのはとても嬉しいことですが、僕が言えることはこれしかありません。
「できることから小さく始めましょう。」
START UP ~ アイデアから利益を生み出す組織マネジメント ~
今まではこういう相談に対し、自身の経験からアドバイスをしていましたが、先日友人にオススメされたスタートアップ経営者向けの本、「STARTUP(スタートアップ):アイデアから利益を生みだす組織マネジメント」を読み、これまでの経験とスタートアップ界で広く認められている知識に共通点を見つけ、これは言葉にして残しておきたいなと思い今筆を取っています。
この本、スタートアップでの起業を目指す方、これから複業を始めようと思っている方には本当にオススメしたい本なので興味が湧いた方はぜひ一度パラパラと読んでみて下さい
「小説」形式でストーリーを追体験できる
この本を読んでまず興味を惹かれたのが冒頭の「著者がなぜこの本を書いたのか」という前置き。
スタートアップについて学ぶ方法は百万通りある。しかし真に学ぶ方法は一つしかない。起業家自身がスタートアップの失敗・成功を経験することだ。私自身の経験からも断言できる。だからこそ私は教科書ではなく小説を書いた。読者のみなさんは本書のページをめくりながら実際にスタートアップを経験し、貴重な経験を学ぶ。破産の瀬戸際に追い込まれたり、不安で眠れなくなったりする必要はない。
そう、この本はスタートアップや起業の指南書でありながら、「小説」という形式を取っているのです。実感を持ってイメージ豊かに「体験」をしてほしい。そのためには教科書ではなく小説の方が適しているから、と書かれたこの一冊。
僕も普段から人にものを伝える上での「物語」の重要性に関しては深く考えているのでこの考え方には非常に共感が持てます。
あらすじ
この本のあらすじはざっとこんな内容です。
主人公は会社を辞め妻と共にネットの自転車販売サイトを立ち上げた若い男性。「色々なメーカーの中古の部品を集めて、新品同様のクオリティの自転車を半額の値段で買える」というビジネスモデルで1年会社を経営するものの何故か事業が上手く回らず悩んでいた。
ある日友人の代わりに気分転換として出ることになったラスベガスのポーカー世界選手権で出会った一人の女性「サム」によって彼の人生は少しずつ変わり始める。
「サム」は今まで複数の会社を起業し、育て売却してきた敏腕経営者。彼女の助言を受けながら、今までの事業を振り返り、もう一度起業のあり方とビジネスモデルについて考え直すことに。
起業に関わる様々な出来事や考え方を、ポーカーのゲームや夫婦関係の中で実践し成長を遂げていくというサクセスストーリー。
難しいことを簡単に。
STARTUP(スタートアップ):アイデアから利益を生みだす組織マネジメントという難しそうなタイトル・テーマにも関わらず書かれている内容は非常にすんなりとわかりやすく頭に入ってきます。
実際、説明している内容は難しいのだと思いますが、それを魅力的なストーリーと共にテンポよく噛み砕いて教えてくれるので抵抗感や引っ掛かりが全く無い。世の中の勉強コンテンツは全てこうあってほしいですね。
タイトルの付け方が本当にもったいないなと思うくらいの良著だと思います。
小さく賭けて、確信を持ってから勝負する
そして、この本で書かれているテーマも本当にシンプルなことを伝えてくれています。
「何度も小さく賭けて、確信が持てたら勝負しよう」
この本が伝えていることはほぼこの一言のみ。
いきなり大きな投資をして一発勝負に賭けるのではなく、まずは小さくても良いから何かを始めてみて、その反応を見る。本当に人が欲しがっているものがなんなのかを突き止め、その確信を得てから勝負に移す、という内容です。
今自分で会社を経営している身からすると、この考えの重要さは身に沁みてひたひたになるほど分かりすぎます。大事なのはアイデアではなく、それが求められているという確証。
僕のところに起業や独立の相談に来る方はほとんどが、「起業するためにはまずは会社を辞めなければと思うんです」と仰います。
もちろん忙しくて事業に集中できない、という気持ちは分かりますがそれはポーカーで言うところの「オールイン(手持ちのチップを全て賭けること)」。一か八かの大勝負です。
オールインをできるほどの確証が持てているのであれば別ですが、そうでないのなら避けるべき選択肢です。
せっかく今は複業の波が来ているのだから、まずは小さく自分の周りで始めてみましょう。手縫いの小物を売ってみるもよし、誰かのお悩み相談に乗るもよし、僕のようにブログを始めてみるもよし。
これも小さいですが立派な「起業」だと僕は思います。
始めてみないと始まらない。
そして「複業を始めようと思っている」という人には「始めてみましょう」としか言うことができません。
だって始めてみないと何もわからないから。
悩んでいるだけではどこにも進めませんし、何も得ることができません。やりたいことがあるのは幸せなこと。週末でも退勤後でもまずは1時間から「始めて」みましょう。
実際「何かを始めたいな」と思っている人はこの世にごまんといると思いますが実際にそれを「始める」人はきっとその中でも100人に一人かそれ以下の確率だと思います。それだけでもう上位1%に入れているわけです。始めるだけで意外と簡単にライバルは少なくなります。
STARTUP(スタートアップ):アイデアから利益を生みだす組織マネジメントはそんな起業や複業を始めたいと思っている人が難しい指南書を読む前に、是非読んでほしいと思う一冊。
まずこの本を読むことがチャレンジへの第一歩。小説を現実にできるのはその一歩を踏み出した人だけです。
関連:頭の中を覗いてみる
「物語」はものごとを分かりやすく伝えるための有効な手段の一つですが、人の「考え方」を分かりやすく吸収するために僕はよく「エッセイ」を読んでいます。
最近読んで面白かったのは”理系”の小説家「森博嗣」さんのエッセイ集。知らない人の頭の中を覗くのは楽しいですよ。