見るもの全てを手の中に。遊べる360度カメラ「insta360 ONE」レビュー
2017/11/23
短距離種目の選手として活躍し世界陸上のメダリストにもなった「為末大」さんの言葉で「視野の広さは視点の多さ」というものがあります。この言葉を聞いた学生当時の僕にはそこまでピンと来ていませんでしたが、社会人の経験を経て、独立した今この言葉を聞くと重みも味わいも全く違います。
社会人になって1〜2年は大学生の頃とは見える視野も視座も全く変わり、学生の頃の悩みが如何にちっぽけなものだったかを知りました。しかし大企業で3年も働くと、気づけば自分の視野のほとんどが会社に関わることで埋め尽くされていました。生活のほぼ全てが会社に紐付いていたと言っても過言ではありません。そして会社から独立した今、やはり思うのは会社員として働いていたあの頃の悩みも苦労も、過ぎてしまえば過去のものだということです。
大学生、社会人、そして経営者というパスを描いた現在、感じているのは「広がった視野」ではなく「増えた視点」。「あの立場ならこう思っているだろうな」「当時だったらこういう行動を取るだろうな」という実体験に基づく”視点”が増えたことにより同じ視野でも多角的に、立体的に見れるようになった気がしています。特に会社員時代の経験は貴重でしたね。世の中のほとんどの人はサラリーマン。サラリーマンの事を知るのが結局は社会でやっていく一番の近道なんじゃないかと思います。
碁石のように視点を増やしながら徐々に視野という領地を増やしていきたいと思う今日このごろですが、人間の視野角は約90度。広角寄りのカメラのレンズを使ってもせいぜいが180度といったところ。精神的にも、物理的にも視野を広げたいなと思った結果、新しいガジェットを購入してしまいました。
何の記事だろうと思った方、ごめんなさい。こちら360度カメラのレビュー記事になります。
insta360 ONEを買いました。
今年の8月末に発売された「insta(インスタ)360 ONE」という名前の360度カメラ。突如発表された従来の360度カメラのそれとは異なる「撮影者を中心に360度視点が動く」不思議な映像が話題になり予約が殺到したガジェット。僕もその仕組みと使い勝手が気になりすぐに予約注文。初期ロットから少し遅れて海外からはるばる目黒の自宅へ到着しました。
過酷な旅路を歩んできたのか、ダンボールがボコボコだったので心配しましたが中のパッケージは傷一つありませんでした。プロトタイプ的な製品だと感じていたのでパッケージはそこまでこだわりが無いかなとあまり期待していなかったのですがいざ手に取ってみるとAppleのそれとほぼ変わらないくらい上質な紙が使われています。
上蓋を開ける時の、密閉されていて中に真空が生まれるあの感じも同じ。やるじゃないかinsta360 ONE。
箱を開けるとこのようにケースに包まれた「insta360 ONE」の本体が。中には説明書とmicroUSBケーブルが同梱。最初から付いている円柱型のケースはそのまま本体のスタンドとしても使用可能です。
「insta360 ONE」実機レビュー
ここからは少し詳しく「insta360 ONE」の外観を見ていきましょう。本体はこのように楕円形に近い形状。中心よりやや右側に球状のカメラレンズが設置されています。球状ということで少しせり出した造りなのでレンズを傷つけないように普段はケースに入れて持ち運ぶことを推奨します。
背面側にも同様に球状のレンズが。
底面にはiPhoneと接続するためのLightning端子が格納されています。ツメをカチッと引っ張るとバネで飛び出てくる仕様が格好いい。
あと触っていて気がついたのですが前後のレンズは微妙に付いている位置が対照ではなくズレているんですね。仕組みはよくわからないですがてっきり同じ位置についているものだと思ってました。
Lightning端子を使う際はこのように直角に引き出して固定。
iPhoneのLightningポートに直接挿して接続します。insta360の専用アプリを使って操作するのですが、見ての通りiPhoneの上下を反転した状態で画面が表示されます。確かにinsta360が底面部に来るのでこの方が使いやすいですね。文字通りの逆転の発想。
撮影はiPhoneを通してでもinsta360単体でもどちらでも可能。単体で撮影する場合は本体上部のボタンを押して撮影していきます。ボタンはこの一つしか無いので1回クリックで360写真撮影、2回クリックで動画撮影、3回クリックでバレットモード(後述)と動作の仕方で撮影を使い分けます。
スリープ状態から一回クリックすると本体のランプが青色に点灯。緑色の変われば撮影が可能という合図です。360度写真を撮影する場合は一回クリックした後「ピロン」という音と共に緑のランプが一回点滅します。この間に少しだけタイムラグがあるので写真の場合は極力ぶれないように固まって撮影しましょう。
360度写真撮影例
ここ一週間ほど楽しみながら使っていますが、僕の場合はこんな感じで縦持ちにして気軽にパシャリと一枚撮ることが多いです。
切り返しが分かりやすいから自撮り棒ほしいな pic.twitter.com/EY0LL3qFZR
— 堀口英剛@monograph (@infoNumber333) 2017年9月19日
取った後はスマホに挿してすぐSNSにシェアできるというのも魅力。360カメラの魅力は「その場の空気感の共有」にあると思うのですぐに撮って出しでシェアできるというのは大事な要素。
白T兄弟来日 pic.twitter.com/MdTrmf1JW9
— 堀口英剛@monograph (@infoNumber333) 2017年9月19日
静止画の場合は広角の自撮り機的な使い方がメインですね。かなり広い範囲を撮影して後から調整できるので人数が多い場面で活躍します。
撮影時はワンクリックでしたが撮影した360度画像は後からでも編集ができるので魚眼レンズモードの他に上のようなリトルプラネットモードなど様々な画が作れます。
そして360度カメラの一番の醍醐味はこのように単純な画像ではなく実際に360度どの角度も見ることができるモードでしょう。皆さんも上の画像をぐりぐりしたり、つまんだり広げたりしてみて下さい。これはどんな広角のカメラでも実現しえない機能。
周りの風景全てを閉じ込めるのでユーザーが見たい場所、方向を自由に指定することが可能です。特に室内なんかはカメラで写しきれないことが多いので最近カフェ記事など色々な場所で利用させてもらってます。「空間」をネットを通して伝えるには最適のアイテムでしょう。
静止画の画質は7K(6912×3456)というとんでもない数値なのでズームしても細部までかなり描写してくれます。暗所にはそこまで耐性がありませんが、明るい野外なら結構いい仕事するやつです。
360度で動画も撮れる、観れる
更にとんでもないなと思ったのがこちらの360度で動画を撮影する機能。360度どんな方向でも後から動画をぐりぐり動かして確認することができます。百聞は一見に如かず、上の動画をぜひぐりぐりしてみて下さい。イベントのレポートに使ったらめちゃめちゃ面白そう。しかもこれ4K撮影だからめっちゃ綺麗ですよね…。
まるで自分がそこにいるかのような感覚を動画から味わうことができます。
360度で撮った動画は後からアプリで編集が可能で、2Dにして自分の見せたい角度、距離から再編集することができます。リトルプラネットの感じは何度見てもコミカルで面白い。
Go Proにもあるような、決まった人物の顔のみを追いかける機能もあるのでレジャーとの相性も非常に良いですね。
ぶん回せ!「バレットモード」!
insta360 ONEの最大の目玉は何と言っても公式の動画でも話題になった「バレットモード」。まるで自分の周りを飛ぶ鳥からの視点のような新体験の360度動画を撮影できると言うもの。
まさかとは思いましたが、その撮影方法は実はめちゃめちゃ原始的な仕掛けでした。「バレットモード」の撮影に必要なのは最初から付属のこのオレンジの紐一本のみ。
底面にネジ穴が切り込まれているのでここにアタッチメントをくるくると回して取り付け。
これで「バレットモード」の準備は完了です。
これでどうするかというと、紐を伸ばして自分の周りをぐるぐると振り回すという使い方。仕組みが公開される前は「どうやってあんな周りこむようなアングルの動画を撮ってるんだろう!もしかして高速なドローン的な何か?!」と興奮したものですが、蓋を開けてみれば何てことはなく、単純にカメラをぶん回すという気持ちが良いくらいプレーンなアイデアが出てきました。コレ考えた人の無邪気さに乾杯。
僕も早速一つ動画撮ってきてみました。周りに人がいないかしっかり確認して、くるくるくるとinsta360 ONEを頭上で回します。僕の腕がまだ足りず地面と平行に回せていないのでちょっと角度が斜めになってしまっていますね。まっすぐ綺麗に回せるよう精進せねば。
アイデア自体は非常にシンプルかもしれませんが、これを技術的に解決するのは非常に難しかったでしょうね。ブレるし方向もめちゃくちゃなのにこんな安定した動画が取れるのはinsta360 ONEに搭載された六軸ジャイロスコープのおかげ。ただの360度カメラには成し得ない業です。
insta360 ONEとTHETA Vを比較
最後に同時期に出た360度カメラとして比較に上がりやすい「THETA V」とスペックを並べてその差を見てみます。どちらを買おうか迷っている方はご参考まで。
insta360 ONE | THETA V |
---|---|
6912×3456 | 5376×2688 |
96mmx36.5mmx25mm(長さx幅x高さ) | 130.6mm×45.2mm×22.9mm(長さ×幅×高さ) |
82g | 121g |
4K(3840×1920)@30fps | 4K(3840×1920)@29.97fps |
スローモーション撮影(120fps)対応 | スローモーションなし |
f2.2 | f2.0 |
¥42,999(税込) | ¥56,700(税込) |
単純なスペックで見るとinsta360 ONEがかなり優勢ですね。画質良いし小さくて軽いし、スローモーション撮れるし安いし。
「THETA V」には独自機能として360度で音声を録音できるという機能があるのでその点が差別化ポイントでしょうか。その場の臨場感を音声含めて残したいというのであれば「THETA V」がいいかもしれませんが、僕は多分音楽付けて公開することが多いのでバレットモードが使えて遊べる「insta360 ONE」を選んでせいかいだったなと思います。
見るもの全てを手の中に
僕は常に一眼カメラを持っているので日常は比較的綺麗に残せている方だとは思いますが、通常のカメラは日常を文字通り「切り取って」いるもの。目に映るものの中から見せたい場所を限定して、選択して、そこだけを残す。それゆえに主題がはっきりしメッセージは伝えやすいのですが、そのファインダーの外側にはもっともっと広い景色が広がっています。
「insta360 ONE」は全くそれとは逆の発想のカメラ。見えるものどころか、人間の目では見えないものまで全てを記録に残そうという欲張りなカメラです。こいつを一台持っていると、次はどんな絶景を360度で収めようかとワクワクしてくるのがこのカメラの重要な”機能”の一つ。物理的にも精神的にも自分の「視野」を広げてくれるカメラです。
insta360 ONEが気になったなら下記の記事もオススメ。「視野」を広げるために是非何本か続けて読んでみてはいかがでしょうか。
- 視線を釘付け!魅せるBluetoothプレゼンター「ロジクール Spotlight プレゼンテーション リモート」
- ミニマルでプレミアムな電気式コーヒードリップケトル「BALMUDA(バルミューダ) The Pot」
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