【映画・感想】「ドラゴンボールZ 神と神」17年ぶりのシリーズ最新作。鳥山明の”想い”が垣間見える。|レビュー
最近結構なペースで映画観てます。今回は「ドラゴンボールZ 神と神」。
世間一般では知らない人はいない超人気作、ドラゴンボール。しかし、連載時やTVアニメ放映時のリアルな”熱”を知っている人は少なくなってしまっただろう。僕ぐらいの世代でもドラゴンボールは単行本で読んだことがあるくらいで、アニメも何となくおぼろげに覚えているくらい。きっと僕らよりも若い子たちは「ドラゴンボール?あぁお父さんが好きなやつね」ぐらいの感想しかないと思う。
このドラゴンボールが人々に忘れられかけているタイミングで17年ぶりの完全新作映画を放映するということは何か意味があるように思えてならない。きっと鳥山明から”今”のドラゴンボールファンに伝えたいことがあるはずだ。
ドラゴンボールZ 神と神あらすじ
全宇宙の運命を賭けた魔人ブウとの壮絶な戦いから4年後。39年の眠りから目覚めた破壊神ビルスは、付き人であるウイスからフリーザを倒したというサイヤ人の話を聞き、界王星で修行していた孫悟空の前に現われる。界王の忠告を聞かずに久々の強敵に挑んだ悟空だったが、ビルスの圧倒的なパワーを前に手も足も出ずに敗北を喫する。さらなる破壊と伝説の戦士「超サイヤ人ゴッド」を求め地球へと向かったビルス。悟空と仲間たちは地球を破壊神の手から守るために立ち上がる。
*Wikipediaより抜粋
もう、本当に今回の敵「破壊神ビルス(画像右)」が強い強い。超サイヤ人3状態の悟空が軽いデコピン一撃でノックダウンされるほど。正直今までの敵って何だったんだと思ってしまうほどのふざけた強さです。
上に書いたストーリーだともろバトルものっぽいですが、意外とそうでもなくて半分くらいはギャグパート。子供向けのギャグが多い印象でした。破壊神ビルスを怒らせないためにベジータが走り回る姿がめちゃくちゃ笑えます。今回の主役はベジータと言っても過言ではありませんね。正直今回はあまりに敵が強すぎてバトルにすら発展しませんw
もちろんラストシーンには熱い戦いがあるので安心して欲しいのですが、「Z」特有のシリアスな雰囲気というものは期待しないほうがいいです。全編を通して結構ゆるい。
次の世代へと繋げた作品
今回の作品を思っていて感じたのは「あ、これオレらに向けて作ってないわ」ということ。
ギャグ・わかりやすい戦闘シーン・雰囲気全てが子供をメインターゲットとして考えられています。
僕ら大人にとっては物足りないかもしれませんが、原点に帰ってよく考えてみるとこれが本当の「ドラゴンボール」なのかもしれません。
鳥山明はドラゴンボールZを連載している途中、何度もペンを置こうと考えたという話は有名です。
それはドラゴンボールの持つ戦いの”刺激”が独り歩きし、鳥山明が描こうとしていたものとかけ離れてしまっていた理由から。
その時の悔しさを今作で晴らしたのではないか、というのが僕の感想です。
シリアスは展開は少なく、出来るだけ観客を楽しませよう楽しませようと考えているのが伝わってきます。
細かい所では、建物の破壊や民衆のパニックなども徹底して描かないというのも印象的でした。
クライマックスのシーンでもそこにあったのは”地球を護るために必至で戦う悟空”ではなく、”純粋に戦いを楽しむ悟空”という姿でした。
鑑賞中一度も暗い気持ちになることなく最後までエンターテイメントとして楽しめる作品になっています。
”難しいことなんか考えずに、楽しもうよ!”という鳥山明の想いが聞こえてくるようです。
そしてネタバレになってしまうのですがラストシーンで、悟空はビルスに負けます。
今までは「地球を守る」「仲間を守る」という大きな制約があったために悟空は決して負けてはいけない存在でした。しかし今回その制約から開放された悟空はのびのびと戦って、コテンパンに完敗します。
その姿を見て、僕はすっと肩の荷が降りたような気がしました。
受験戦争に勝たなきゃいけない、就活で成功しなきゃいけない、会社で出世しなければいけない、と常に勝つことに脅迫されている日本人に対するメッセージのように思えたからです。今まで勝つことが必然だった悟空が負けることによって、”必ず勝たなくてもいい。別に負けたっていいじゃないか”ということを伝えたかったのではないかと思います。
そして、それによって一番救われたのは悟空自身でしょう。
今までおつかれさま、悟空。
ガチガチのバトル物を期待して観に行くと拍子抜けしてしまうかもしれませんが、軽い気持ちで観れば結構楽しめる作品です。お子さんがいる方は是非一緒に連れて行ってあげて下さい。この作品は親子で共有して楽しめるドラゴンボールです。
それにしてもベジータ成長したなぁ…。ブルマが殴られてブチ切れたときは少しうるっと来ちゃいました。
PITE.