PC画面の中だけで展開するサスペンス映画「search」
ネットとリアルの境界線が限りなく薄くなっている今。もしかしたらあなたの周りにも“リアルよりもネットを優先”という考え方をしている人がいるのではないでしょうか?
ネットの情報は上げるユーザーの「見せたい姿」が反映されたものなので全てが真実とは限りませんが、概ねのことは嘘ではない。
「この音楽が好きです」
「週末にハワイで友だちの結婚式!」
「今日もいつメンと飲み会」
「転職先が決まりました」
最近の行動から趣味嗜好、さらには考え方までネット上には個人の「痕跡」が残っています。
「跡」を辿れば、その人のことが何でも分かる。現代のインターネットがどこまで人々の生活に深く密接に関わっているのかが分かる、前代未聞の形式で撮られた映画「search」を観てきました。
PC画面の中で完結する映画「search」あらすじ
「勉強会に行ってくる」と昨晩メッセンジャーで会話をした娘が今日も帰ってこない。不審に思った父親が、PCを使って娘のSNSや交友関係を調べる内に見えてきた数多くの「娘の知らない一面」。娘は今どこにいるのか、果たして生きているのか、誘拐されたとしたらその犯人は?
ネットの痕跡を手がかりに、真実の答えを探す新時代のインターネット・スリラー!
この映画はネット上の情報だけを頼りに娘を探すという推理サスペンス映画。単純にこれだけなら今までにもありそうなアイデアですが、面白いのは100%全編に渡って全ての映像がPC画面の中だけで撮られているというところ。
PCのインカメラ、iPhoneのFaceTime、監視カメラの映像、ネットニュースと場面が変わるときは画面ごと変わる非常に面白い試みの映画。
Macのこの起動画面と「ジャーン!」という起動音が映画館中に響き渡った瞬間には少し鳥肌が立ちました笑
低予算で制作、アメリカの9館の小劇場での限定公開から始まり、ネット上で話題が広まり上映劇場が増え、今やクチコミだけで28億円を超えるスマッシュヒットを収めている欧米版「カメラを止めるな!」と言える作品です。
タイトルの「search/サーチ」というのが娘を探すという目的とネット上で検索するという2つの意味に掛かっているのがまたお洒落ですね。
ネットのあるあるが詰まってる
劇中の娘の捜索はありとあらゆるSNS、Webサービスを使って行われます。その使われ方が実にリアルで共感を生むというのも人気を呼んでいる点の一つだと思います。
Facebookは学校の友達などオフィシャルな交友関係、Instagramでは自撮りの写真、tumblrでは趣味の綺麗な風景写真、地味な子が実はやってるライブ配信。
見ていて、アメリカもネットにおいては日本と同じような生活スタイルなんだと、どこか少しほっとしました。
このようなSNSにログインするためのパスワードの入手の方法が実にリアルだったり、フリー素材の使われ方、画像検索の精度、と「ネット上のあるある」が詰まりまくっているのがまたツボにハマりますね。
特に手元のキーボードでは打つけれど相手には送信しないで消してしまう、「相手が入力中です」のあのフキダシ。
画面の向こうで相手がどんなことを考えているのか、それを改めて感じるようになる映画です。
ネット民もそうじゃない人も
ネット上での情報をテーマにした作品だと、日本の映画「スマホを落としただけなのに」は情報を悪用していますがこちらの「search/サーチ」はどちらかというと情報を良いことに使っている映画です。
ジャンルとしてはサスペンスやスリラーという区分けですが、所々笑いもあり、そこまで怖くもなく誰でも楽しめる映画だと思います。
若者はSNSの使い方を見ながら「わかるかわかる」と失踪した娘の気持ちに共感し、世代が上の方は娘を探すお父さんの気持ちに感情移入できるはず。
ネットの進化と親子の絆を感じられる温かい作品でした。