オタクバンザイ!少年の夢と40年のカルチャーを濃縮した映画『レディ・プレイヤー1』
僕は涙腺が弱い方なので映画館で涙を流すことはよくありますが、映画を見ながら汗をかいたのはこの作品が初めてでした。手に汗にぎる、とはよくある表現ですが、手だけでなく額にまで汗がにじむほど、心躍り熱くなる映画と出会ってしまいました。
その映画の名前は『レディ・プレイヤー1』。
「E.T」「ジュラシック・パーク」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など名作を次々と生み出してきたSFの巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が2018年に手がける最新作です。
描く内容は「2045年のVR(ヴァーチャル・リアリティ)が普及した近未来」。
これだけ聞くと「ソードアート・オンライン」や「マトリックス」など似たような作品が多々あるように感じますが、『レディ・プレイヤー1』には”ただのSF”にはない独自の魅力が詰まっています。
・ゲームが好き
・アニメが好き
・映画が好き
・音楽が好き
もし上の条件に1つでも2つでもあなたが当てはまるのなら、この記事を読んだらすぐ、最寄りの映画館の一番良い席を予約して『レディ・プレイヤー1』を観に行って下さい。ノンストップ、極上の2時間があなたを待っています。
『レディ・プレイヤー1』のあらすじ
photo:via Entertainment Weekly
まずは簡単に『レディ・プレイヤー1』のあらすじからご紹介。
2045年。環境汚染や気候変動、政治の機能不全により、世界は荒廃。そのため、スラム街で暮らさざるを得ない状況に陥った地球上の人口の大半は「オアシス」と呼ばれる仮想現実の世界に入り浸っていた。
オアシス内では現在、創始者であるジェームズ・ハリデーが亡き後流された遺言により、勝者にはオアシスの所有権と5000億ドル(日本円で56兆円)相当のハリデーの遺産が授与されるゲームが開催されている。ゲームをクリアする方法はハリデーがゲームの中に隠した「3つの鍵」を見つけること。莫大な試算とオアシスの所有権を求め、一般ユーザーのみならず、世界2位の大企業「IOI」もこのゲームに大規模な人員を投入していた。
スラム住人の若者「ウェイド・ワッツ」はハリデーの大ファンで、ゲームクリアのため日々彼の生涯を調べ、ゲームクリアのためのヒントを探していた。ハリデーの過去から第一の関門の答えを見つけたウェイドは見事最初の鍵を手に入れるが、彼の進行を阻止するため「IOI」が刺客を放ち、仮想現実のみならず彼の現実世界にまで危険が及び始める。
※ 一部wikipediaより引用・抜粋
ストーリーは王道の「冴えないオタク系男子がゲームの世界で大活躍して世界を救う」的な話なのですが、敢えてひねらず正攻法でぶつかってくるからこそ面白い。分かりやすく、芯が通った話なので小さなお子さんでも楽しめる作品です。
しかし、この作品の本当のターゲットは「少年の心を持った大人」。これは間違いないでしょう。
真っ直ぐなストーリーの中に、大人がついつい寄り道をしてハマってしまいそうな「落とし穴」がそこかしこに掘られた映画なのです。
ゲーム一本プレイした気分。
photo:via YouTube
『レディ・プレイヤー1』を見終わった後の感覚は、映画を一本鑑賞したというよりも、長編のゲームをクリアし終わった後の感覚に似ています。
題材がゲームの世界、というのもあるのですが、
鍵を3本集めるという課題(ゲームの大目的)
↓
鍵の在り処の手がかりを探索
↓
謎解きを経て試練をクリアする
↓
次の試練のヒントが現れる
という流れがまさにゲームの流れそのままで、今自分がキャラクターを操ってプレイしているんじゃないかというな錯覚に陥るのです。
世界がゲームなので「こういうのあったよね!」と思わず首を振ってしまう「裏ワザ」的な要素も出てきたりして大興奮。映画を見てるというよりもジェットコースターに乗りながらテレビゲームをプレイしているような、没入感のある作品です。
映画の冒頭3分の「第一の関門」レースシーンを公開した動画があるので、まずは何も言わずこれをみて下さい。
どうです?最高に面白そうじゃないですか?
ポップカルチャーへの愛が詰まりまくってる。
ストーリーや映像表現だけでも見ごたえのある映画ですが、『レディ・プレイヤー1』の”深み”はまた別のところにあります。
この映画の世界は今の世界の延長線上の2045年。なので僕達の世界のカルチャーがそのままそっくり引き継がれているのです。
海外で言う「ポップカルチャー」、日本で言うところの「オタク文化」がこれでもかと、本当にこれでもか!!と詰まりまくっています。
主人公が乗る車はデロリアンだし、ヒロインの乗るバイクはAKIRAのバイク、ステージのボスはT-REXとキングコング。
アイアン・ジャイアントは大暴れするわ、主人公が波動拳使えるわ、オーバーウォッチやHALOのキャラが撃ち合ってるわでもうハチャメチャ。
最終決戦にはトランスフォーマー達がどこからか駆けつけちゃうし、デスノートのリュークがにやにやしてるし、エイリアン生まれちゃうし、よーく見るとデジモンとキティちゃんとばつ丸くんが後ろの方歩いてるし、カウボーイビバップの戦闘機がしれっとガレージにあるし、もう情報量多すぎ。
さらにはこれですからね。武士がガンダムに変身して、巨大メカゴジラをビームサーベルで切りつけてます。ガンダムそんなに飛べないっしょ、とかサーベル逆手で持たないっしょとか突っ込みどころは死ぬほどあるけれど、もうそんなのどうでも良いほど格好いい。ちゃんとバトルシーンのBGMゴジラのテーマだし。
「ぼくがかんがえたさいきょうのげーむ」をスピルバーグ監督が「こんなん絶対おもしろいっしょ!」くらいの見切り発車で作っちゃったようなぶっ飛んだ名作です。
少年時代のトラウマになりやすい「シャイニング」や「チャッキー」のようなホラー映画も笑えるパロディとして昇華させてくれるし、ところどこで小気味良い音楽も流してくる。
最終決戦でラジカセから、ノリノリのヘビメタを主人公が流し始めるシーンとかもう最高。
只の回顧じゃなくて、Daft Punkとか今の流行りもきちんと入れてくるのが、また。
古典から最新まで、ゲームもアニメも映画も垣根を超えてあらゆるポップカルチャーへの愛が詰まりに詰まりまくった映画です。
オタク要素満載の割に最後はきっちりアメリカっぽいキスシーンで締めちゃうのがニクい。
少年の心を秘めたあなたに。
アニメ・ゲーム・マンガ。どれかのカルチャーが好きな人で、この説明で観に行きたくならない人はいますでしょうか。否。
最近の流れで言うと「アベンジャーズ」や「ジャスティス・リーグ」など異なる作品を合流させるクロスオーバー作品が人気ですが、この映画『レディ・プレイヤー1』は、さらにメタ的な視点でカルチャーをミックスした作品。
「あのセリフはどんな意味なんだろう」
「もしかして後ろのキャラってあいつ…?」
「このシーン理解するために次あの作品見てみるか。」
と見れば見るほど、噛めば噛むほど味が出てくる、深みと広がりのある映画です。まさにカルチャーの交差点。
主人公が創始者ハリデーの過去から鍵の手がかりを探したように、スピルバーグ監督が隠した「少年の夢」達を映画館でくまなく探し出しに行きましょう。