軽いレンズはシャッターと足取りを軽くする。
2018/01/22
昔どこかで読んだ「良い写真を撮るコツはカメラを常に持ち歩くことだ」という言葉。これは、その通りだと思います。
突発的に遭遇するシャッターチャンスを逃さない、という意味でもそうですし、カメラを手に、首に下げているだけでいつもの日常もちょっと色づいて、輝いて見える。いつもの風景が「被写体」に変わるのです。
α7は軽くて小さい、でもレンズが重くて大きい
僕が今メインで使っているカメラは「SONY α7 Rⅱ」。約625gというコンパクトで軽量のボディにも関わらず約4240万画素のフルサイズセンサーを搭載する文字通り機能がギュッと“詰まっている”カメラです。
カメラ自体は非常にコンパクトで持ち出しやすいのですが、最近の悩みが「レンズが重くて大きい」ということ。フルサイズ対応のレンズかつ明るさを求めるレンズとなると、どうしても大型化&重量化してしまうので毎日つけっぱなしにして常に片手に持つということが難しいという難点があります。
モノ撮りやガッツリとした撮影時には大活躍し比類なき活躍をしてくれるのですが、普段使いとなると持ち運ぶのになかなか気合の要る代物です。
サムヤンの軽量35mm単焦点レンズを購入
この問題を解決するために僕が今回導入したのがSAMYANG(サムヤン)という韓国のレンズメーカーの単焦点レンズ。SAMYANG(サムヤン)は現在ケンコー・トキナー社が日本で代理販売しているブランドで、優しい価格に反したキレの良い写りに定評があります。
そのSAMYANGが出しているSAMYANG 35mm F2.8 AFというレンズを今回購入しました。
このレンズの良さは何と言ってもその軽さと薄さ。
わずか86g、長さ3.3cmというフルサイズ対応レンズとは思えない、コンパクトなサイズ感。同じ焦点距離で同じF値だとSONY Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAがありますが、こちらは重量が120g、長さが3.6cmとやや大きいので迷いましたが、軽さと薄さを優先して今回はSAMYANG 35mm F2.8 AFを購入。
価格も約SAMYANG 35mm F2.8 AFが38,000円なのに対して、SONY Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZAが73,000円なので値段も安価。それでいてSONYレンズとほぼ同等の画質が出せるという評判のレンズだったので、レンズキャップ代わりにもなるし、という気軽な気持ちで購入しました。
僕のα7 RⅢに装着した図がこちら。ボディの小ささに見合う控えめなサイズ感のレンズです。そうそう、こういうのがやりたかったんだよ!
軽さもそうですが、やっぱりレンズが薄いというのが良いですね。首から下げた時、片手に持った時にほぼボディを持っているだけのような感覚なので取り回しが楽。
重くて長いレンズだとカバンから出すのが面倒だったり、そもそも持ち歩くことすら諦めてしまうことがあるのですが、これなら常に手に持っていてもぶら下げていても煩わしくない。
日常の風景をいつでもファインダーを通して見つけることができます。
作例 – 道端スナップ
レンズ自体の写真を見せるよりも、レンズを通して撮れた写真を見せる方がレンズレビューとしては有益だと思うので、ここからは数日の間に撮った写真を淡々とご紹介していきます。
普段はなんとなく通り過ぎてしまういつもの駅までの道でも手元にカメラがあるだけでついつい被写体を探してしまう自分がいます。
気になったら、取り敢えずパシャリ。
ファインダーを覗けば、日常はいつでも作品に変わります。
個人的にこのレンズを買って本当に良かったなという一枚。
駅までの道のいつものビルなのですが、被写体を探していると自然といつも目を向けないようなところに視点を当てられます。一羽の鳥が羽ばたくところを見かけ、それを追うと屋上に沢山の鳥たちが。朝の薄い青色と鳥の影のコントラストが美しいと思いシャッターを切りました。
小さいカメラを手に持っているだけでいつもの場所でもいつもと違った景色が見れる。
北海道スナップ
薄くて軽いレンズは旅行にも活躍してくれます。大きいレンズは確かに自由で質の高い写真が撮れますが、その代わりに持ち運びに大きなエネルギーを消費します。ただでさえ疲れてしまいやすい旅行なので、シャッターを切ることを諦めてしまうこともしばしば。
良い画を撮ることも大事ですが、人間常に本気は出せないので基本はSAMYANG 35mm F2.8 AFを付けて、ここぞというときだけ他のレンズを付け替えるという運用で最近は旅行に行っています。
先日行ってきた北海道旅行の写真をつらつらと。
使っていて驚いたのは写りのキレの良さ。開放のF2.8でもキリッと描写してくれるので細部の細部までを忠実に切り取ってくれます。上の写真の真ん中に見える小さな飛行機。
これをここまで拡大できてしまいます。α7 RⅡの高解像度のなせる技とも言えますが、そのセンサーに忠実に光を届けるレンズがあって初めて解像度に価値が生まれます。レンズの解像感、という意味では非常に優秀な一本だと言えます。
上着の中にカメラを忍ばせておけるので、寒くてもポケットから手を出すちょっとの勇気で写真が撮れます。
陰影もかなり良く写してくれます。シャッターを切れば切るほど好きになるレンズ。
作例 – 渋谷スナップ
僕はほぼ毎日と言っていいほど渋谷に立ち寄る生活をしています。僕にとっては完全に日常の風景ですが、海外の観光客の方が常にカメラを片手に何かを撮影しているところを見ると、「いつもの場所」ではない人にとってはフォトジェニックな街なんでしょう。
目で見ていてもそうですが、やっぱりファインダーを覗くと映える街です。
いつもならスマホを見ながら俯いて歩く道でも、カメラがあれば高く、遠くを見渡せるようになります。
このレンズは焦点距離(写真の画角みたいなもの)が35mmとちょうど人間の視野と同じくらいのサイズなのでほぼ見たままの景色を撮ることができます。
なので構図的にすごく面白い写真が撮れるとかすごくボケるというレンズではありません。
良くも悪くも「見たまま」なのでクセがなく、普段使いのスナップ用としては使いやすい一本でしょう。
画角で面白みを出せない分、被写体の選択や色、ストーリー等、他の要素工夫をしなければいけないので、写真についてより深く考えられるようになったような気がします。
小さなレンズで、打席を増やす
最後にさらっとSAMYANG 35mm F2.8 AFの良さをまとめると、
・軽い
・薄い
・キレが良い
・35mmがスナップに使いやすい
上記の様な形で逆に悪い点を挙げるとするならばオートフォーカスがたまに迷うことがあるという点でしょうか。たまーに一発でピントが合わずもう一度合わせ直すことがあるので、その精度だけ改善されたら本当に完璧なレンズだと思います。
小さなレンズはカメラを手に持つハードルを下げてくれます。手に持っていれば自然とシャッターを切りたくなる。そうすれば必然的に写真も増え、上達も早くなり、思い出も残る。
何の世界でもそうですが、とにかく打席に立つといういうことが一番大事。鞄の中や家の棚の上のカメラからは何も生まれません。写真の枚数を増やしてくれるという意味では「軽さ」も重要なスペックの一つだと言えるでしょう。
カメラとフットワークを、軽くしてくれるレンズです。