カジュアルなレビューの文体を学ぶ。ジェーン・スーさんの「今夜もカネで解決だ」

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Konyamokanedekaiketsuda 1

こういう文章書けるようになりたい。

本日も“monograph”をお読みいただきありがとうございます。PITE.(@infoNumber333)です。

一口にブログ運営と言ってもサイトのデザイン、写真の撮影、カテゴリーの切り方など考えなければいけないことは山ほどありますが、最近力を入れたいなと感じているのは「文章力」。ブログなんだから当たり前だろと思われると思いますが、これが基本にして一番難しい。画像でごまかしていたわけではありませんが、文章自体はまだまだだなと思うことが多々あります。

昔から僕は「習うより慣れろ」派なので、文章力を鍛えるためにとにかくまずは良質な文章にたくさん触れてみることに。その中の一冊でwebledgeにオススメされた「今夜もカネで解決だ」というエッセイがとても参考になったので今日はこちらをご紹介したいと思います。軽快で流れるような文体で人の温かみが伝わるエッセイ集。

ジェーン・スーさんのマッサージレビュー本

「今夜もカネで解決だ」はコラムニスト、エッセイスト、音楽プロデューサー、ラジオパーソナリティ、作詞家と複数の顔を持つマルチクリエーター「ジェーン・スー」さんがAERAにて連載していたコラムを一冊の本にまとめた単行本。

この本を読んでみようと思った理由の一つが、「ジェーン・スーさん自体が元々ブログを書いていて、そこから雑誌の連載を始め有名になられた方である」ということ。そしてもう一つが「一冊まるごとがレビュー本」ということ。

内容自体は「ジェーン・スー」さんがライフワークとして通っている各地のマッサージ店について一つひとつレビューを書いていくというもので、コラムなので1話が2〜3ページ以内で終わります。このサッと読めるコンパクトさが小気味良く、枕元に置いておいて寝る前に一日1話だけ読んで本を閉じる、という習慣を読み終わるまで続けていました。

しかし一度読み始めてしまうと軽快で独特な語り口であれよあれよと引き込まれ気がついたら3話通して読んでいた、なんてことも。これは人気が出るのも頷けるわ。

読み進めながらも、ブロガー出身で成功されている方の先輩として盗めるところは盗もうと強く決意。特に気に入った文章があるページは角を折り返して印を付けておいたのですが、気づけばドッグイヤーだらけで本の角が丸くなっていました。

せっかくなので今日はその中から気に入った、勉強になるなあぁと思った文章をいくつかご紹介したいと思います。

「この安さ、嬉しいけど後ろめたい。」

程なくして、カーテンの外から「よろしいでしょうか?」と鈴を振るような声が聞こえ、SEKAI NO OWARIが好きそうな小柄な少女がブースへ入ってきました。透き通った肌が紅潮しているところをみると、前の客が終わったばかりですね。すいませんね、今度は地獄の終わりから這い上がってきたような中年女がお相手よ。

本の序盤で出て来る価格が安いマッサージ店のレビューの一節なんですが、この文章完璧過ぎませんか。

まずは「鈴を振るような声が聞こえ、SEKAI NO OWARIが好きそうな小柄な少女がブースへ」の描写力。これだけで脳内再現余裕です。その前段を踏まえてからの「すいませんね、今度は地獄の終わりから這い上がってきたような中年女がお相手よ。」という文章。ユーモアを交えながら「SEKAI NO OWARI」から韻を繋げてきます。

古文でも昔から「流れるような文章」には語感とか韻とかが考えられ散りばめられてるんですよね。

「パイセンを見習え!」

慢性肩こりになるまでぎゅうぎゅう働き、疲れたーとお金を使う。ワーッと運動して、モリモリ食べる。財布もエネルギーも、出し入れの摩擦熱が過剰。

この文章は前段の「ぎゅうぎゅう」とか「モリモリ」とかの擬音の流れが素敵。擬音は不用意に使うと文章が幼稚になってしまいますが、こうやって畳み掛けると非常に店舗が良くなるんですよね。

そして最後の「財布もエネルギーも、出し入れの摩擦熱が過剰。」という一文でトドメ。「財布とエネルギー」から「出し入れの摩擦熱」という表現を思いつくとは。こういう言葉の使い方とっても憧れます。

「青春を買い戻せ」

いざ、と跨り漕いでみれば、車輪は思いの外力強く前に進みました。そのあとはスルスルとなめらかに。まるでカゴにETでも乗せたような軽やかさです。グイッとペダルを漕ぐたびに頬に風を受け、甘酸っぱさに胸がキュウキュウと締め付けられる。なんか、青春!自転車は、思春期と親和性の高い乗り物です。

何故かマッサージのレビューの中に一話だけ電動自転車のレビューが挟まっています。とにかくこの人は例えが上手いんですよね。電動自転車の快適さを「まるでカゴにETでも乗せたような軽やかさ」と言い換えますからね。そこから擬音で畳み掛け、「自転車は、思春期と親和性の高い乗り物です。」とちょっとかしこまったワードで締める。

「ブランドバッグよりマッサージチェア」

相変わらず週イチのマッサージは続けているけれど、ほぐされる以上のスピードで仕事が私の身体を硬くします。賢者ならば、ここで「やはり運動だ!」となります。愚者は「マッサージの頻度を上げよう!」となります。私はやはり後者でした。私、やってしまったんです。このマッサージチェアを、買ってしまったのです。

そして最終的にはジェーン・スーさんマッサージを買います。これマッサージ店のレビュー本なのに。絶妙に期待を裏切ってくる感じがもう堪らないですね。

このレビュー、別段マッサージチェアの性能には触れていないのに読んでいると不思議とほしくなるんですよね。なぜそのような感情になるのか考えてみると、「なんで買ったのかというストーリーがきちんと描かれているから」そして「マッサージ(を受ける側)のプロが言っている」という2点が理由なのではないかと思います。

スペックや性能は大事ですがモノを買うということはそれだけで決まるほど単純じゃない。そこに至るまでの背景が大事なんです。そして実績がある人の「背景」ならなおさら説得力があります。

僕もこういう血の通ったレビューを書けるようになりたいですね。

読むマッサージ

AERA編集部からお話をいただいた時、私は初めての週刊連載に怖気づいていました。毎週毎週、自分の身に面白いことが起こる自信などない。「趣味のことなど…」と言われ、無趣味な自分を呪いました。しかし、探せば誰にだって何かあるものです。私の身体はいつだってこっていて、マッサージされるのが大好き。ならば趣味と実益を兼ねてマッサージ放浪記を書こう。そうして始めた連載でした。

最初にこの本を紹介された時、僕自身マッサージには全く興味がありませんでした。なんというか誰かに身体を揉まれるのがむず痒く、くすぐったいような気持ちがしていて。

しかしこの本を読み始めてからは俄然マッサージへの興味とドーパミンがドバドバと出てしまい先日我慢できずに仕事中に渋谷のマッサージ店へふらっと立ち寄ってしまいました。結果はもう大満足で頭から肩にかけてがふわっと軽くなりました。メンテナンスって大事ですね…。自己投資を怠っていたなと反省。

公式のこの本の紹介で「読むマッサージ」というフレーズがあったのですがまさにその通りで読んでいるだけでもくすりと笑ってしまい、自然と心が揉まれていくような文章。僕の場合は心どころか実際に身体まで軽くなってますからね。こういう人の気持ちに直接語りかけられる文章を僕も身につけたいと思います。

ホーリーはこう思うよ。
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ブロガーの方は騙されたと思って一度読んでみて下さい。意外と何かの「レビュー本」ってそんなに多くないので。きっと参考になると思います。

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カジュアルなレビューの文体を学ぶ。ジェーン・スーさんの「今夜もカネで解決だ」

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