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一夜で巡る四つの季節、繋ぐ縁の物語。映画「夜は短し歩けよ乙女」感想・レビュー

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    2017/04/16

Yoruha mijikashi arukeyo otome review 6
ようやく観れました…!

本日も“monograph”をお読みいただきありがとうございます。
PITE.(@infoNumber333)です。

昨年記事にした森見登美彦原作「夜は短し歩けよ乙女」のアニメ版映画が4月7日より公開されたので本日映画館にて見てまいりました。感想は是非記事本文を読んでいただきたいのですが、期待通りの森見×湯浅ワールド全開のポップで珍妙な作品でした。ファンの人はもちろんそれ以外の方にも今すぐ映画館で体験してほしい作品です。若干ネタバレと言うかストーリーの流れに触れているので気になる方は鑑賞後にどうぞ。

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夜は短し歩けよ乙女 あらすじ


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クラブの後輩である”黒髪の乙女”に思いを寄せる”先輩”は今日も「なるべく彼女の目にとまる」ようナカメ作戦を実行する。春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭、そして冬が訪れて…。京都の待ちで、個性豊かな仲間達が次々に巻き起こす珍事件に巻き込まれながら、季節はどんどん過ぎてゆく。

外堀を埋めることしかできない”先輩”の思いはどこへ向かうのか!?


あらすじは森見登美彦氏原作の小説を元に、収録されている話を映画用に再編集されています。後述しますが2時間弱があっという間のとても密度の濃い作品に仕上がっています。

豪華制作・キャスト陣


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本作「夜は短し歩けよ乙女」を語る上で外せないのが作品に携わる関係者の豪華さ。監督は同じ原作者、森見登美彦の「四畳半神話体系」を手がけた湯浅政明氏。あの名作「ピンポン」のTVアニメシリーズも監督しています。どちらも個人的にはとても好きな作品で僕も「夜は短し」公開前にもう一度「四畳半」を1クール観直してから望んでいます。サブカル感が強いこの手の作品の映像化に関しては湯浅監督はもう間違いないですね。

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そして一応本作の主人公、「先輩」役を務めるのが今を時めくマルチタレント「星野源」さん。星野源さんは演技も音楽もラジオも文章もセンス抜群。僕も心から尊敬してやまない御仁なのですが、今作の声優はどうかというと「特に普通」でした笑 やはり俳優と声優は勝手が違うのか、少し聞き取りづらい部分があり森見登美彦ワールド独特の早回しにあまり向いてないような印象でしたね。上で「一応」と書いたように主人公ではありつつもそこまでセリフが多いわけではないので個性を出すのも難しい役柄だったのではないかと。

逆にヒロイン「黒髪の乙女」を務める花澤香菜さんの演技は秀逸でしたね。前向きでどこまでも、のっしのっしと歩を進めていく天真爛漫な乙女の可愛いさ、元気さ、強さ、ぎこちなさを余すところなく演じきっていました。さすが本職の方。

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また、配役で光っていたのは「パンツ総番長」役の「ロバート秋山」さん。声色もパンツ総番長のイメージにぴったりで、後述するミュージカルシーン(!)でも素晴らしい歌唱力を披露していました。深夜番組ゴットタンのマジ歌選手権は初回から全部欠かさず観ていますが、あそこでの活動がこんな仕事にまで結びつくとは。この人もまたセンスの塊。

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そしてエンドロールだけでしたが主題歌がアジカンというのが世代的にはまた堪りません。湯浅監督、アジカン、キャラデザの中村佑介と、「四畳半」のメンバーが再集結し、さらに豪華な声優も当てて映画を作ったというのだから期待が高まらずにはいられません。

一夜で巡る四つの季節、それぞれの時計


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本作「夜は短し歩けよ乙女」では一夜の間に乙女の周りに起こる、本当にたくさんで様々な出来事を描いていきます。原作小説の各話を映画用に再編集、再構築しているのでわずか2時間弱の時間で流れる情報量がとにかく多い。

なんとたった一晩で「春夏秋冬」の四季全てをモチーフにした出来事を描いていくのですから。春の先斗町での李白との飲み比べ、夏の古本市、秋の文化祭、冬の風邪。どれもが森見登美彦ワールド全開の不思議でどこか暖かいストーリー。その四つの話と季節がジェットコースターのようにあっという間に過ぎていきます。これで面白くないわけがない。

そして、この「あっという間の一夜」は物語の中でも「時間」という言葉と共に語られます。「毎日があっという間に過ぎていく。一年が一日に感じる」という老人たちに対して黒髪の乙女が過ごしている時間の流れは濃密です。何しろ「一夜が一年に感じている」わけですから。何事にも恐れず怯まず前向きに歩いて行く「乙女」には周りの全てが新鮮で”オモチロイ”ことばかり。そうやって過ごすことが人生の「時計」を遅くする方法なのかもしれません。

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上映時間があっという間に感じる一つの要素は「映像の面白さ」にもあります。よくもまぁ固くて回りくどいあの森見登美彦氏の小説をここまでポップに楽しく滑らかに描いたな、というほどで春夏秋冬全てのシーンに「色」があり「動き」があり「音」がありました。思わずクスリとしてしまうような場面も所々挟み込まれていて冬までのテンポは最高の一言。この辺りは淡々と話が進む四畳半よりも映画向けに作られている印象ですね。小説だけでは表現しきれない要素を見事に映像化しています。

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特に好きなのはやはり「夏の古本市」と「秋の文化祭」のシーンですね。本の海を回遊する場面、文化祭の目まぐるしい場面展開とミュージカルには正直舌を巻きました。それぞれで一本ずつ映画撮ってもいいくらいの内容。鮮やかな色彩・背景で流れるオーケストラの音楽、目で見ても耳で聞いても楽しめる映画です。たぶんこれ今年も文化庁メディア芸術祭で賞取る流れのやつだと思います。

歩いて繋がる縁の話


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「時間」と共に本作で強調されているのが「縁」の話。

春の先斗町での飲み歩きでは、出会う人出会う人が繋がり「縁」を辿る内に「偽電気ブラン」へと辿りつきます。夏の古本市では”本は全て繋がっていて、この古本市全体もまた一つの本である”という概念が語られ、秋の文化祭では竜巻がもたらす「りんご」と「鯉」にまつわる”恋”の縁が。そして冬には「風邪」という「縁」のオマージュが人から人へ次々と伝染していきます。

「先輩」と「黒髪の乙女」は奇妙な縁を繋いで繋いで、最後にようやく巡り合うことになります。ほぼ全てのキャラクターが風邪を引く中、作中でずっと風邪を引かず「風邪の神様に嫌われているんです、わたし」と言っていた黒髪の乙女も最後のシーンではやはり風邪を引いてしまいます。これはむしろ二人の「縁」を結ばせるため、神様が調整した粋なはからいだと僕は思うのですがいかがでしょうか。実は乙女は風邪の神様に好かれていて、二人が結ばれるために人が風邪を引き「縁」を成したのではないかと。

語りたいことは沢山ありますが、語りすぎても面白みが薄れてしまうので今回はこのくらいに。

この記事を読んで「夜は短し歩けよ乙女」が気になった方は是非劇場へ。こうして僕の記事をあなたが今こうして読んでいるのもきっと、何かの”縁”ですから。



Pite(@infoNumber333)はこう思うよ。
来場者特典で付いてくる小さな冊子には森見先生描き下ろしの本作の後日談が書かれていました。いつも通りの堅苦しく難しいことを語っているようで何も書かれていない、微笑ましい内容です。
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